■ 2010.05.15号
何が見えるの、看護婦さん、あなたに何が見えるの
あなたが私を見る時、こう思っているのでしょう。
気むずかしいおばあさん、利口じゃないし、日常生活もおぼつかなく
目をうつろにさまよわせて
食べ物をぽろぽろこぼし、返事もしない
あなたが大声で「お願いだからやってみて」と言っても
あなたのしていることに気づかないようで
いつも靴下や靴をなくしてばかりいる
おもしろいのかおもしろくないのか
あなたの言いなりになっている
長い一日を埋めるためにお風呂を使ったり食事をしたり
これがあなたの考えていること、あなたが見ていることではありませんか
でも目を開けてごらんなさい、看護婦さん、あなたは私を見ていないのですよ
私が誰なのか教えてあげましょう、ここにじっと座っているこの私が
あなたの意思で食べているこの私が誰なのか
私は十歳の子供でした。父がいて、母がいて
十六歳の少女は足に羽根をつけて
もうすぐ恋人に会えることを夢見ていました
守ると約束した誓いを胸に刻んで
二十五歳で私は子供を産みました
その子は私に安全で幸福な家庭を求めたの
三十歳、子供は見る見る大きくなる
永遠に続くはずのきずなで母子はお互いに結ばれて
四十歳、息子たちは成長し、行ってしまった
くれました
五十歳、もう一度赤ん坊が膝の上で遊びました
私の愛する夫と私は再び子供に会ったのです
暗い日々が訪れました。夫が死んだのです
先のことを考え ― 不安で震えました
息子たちは皆自分の子供を育てている最中でしたから
それで私は、過ごしてきた年月と愛のことを考えました
今私はおばあさんになりました。自然の女神は残酷です
老人をまるでばかのように見せるのは、自然の女神の悪い冗談
体はぼろぼろ、優美さも気力も失せ、
かつて心があったところにはいまでは石ころがあるだけ
でもこの古ぼけた肉体の残骸にはまだ少女が住んでいて
何度も何度も私の使い古しの心をふくらます
私は喜びを思い出し、苦しみを思い出す
そして人生をもう一度愛して生き直す
年月はあまりに短すぎ、あまりに早く過ぎてしまったと私は思うの
そして何物も永遠でないという厳しい現実を受け入れるのです
だから目を開けてよ、看護婦さん ― 目を開けてみてください
気むずかしいおばあさんではなくて、「私」をもっとよく見て!
『変装~A True Story~』(パット・ムーア著:1988年朝日出版社)より
「ニューヨークバッファローに生まれ、ローチェスター工科大学卒業後、工業デザイナーとしてローウィー社勤務。高齢者のニーズ追及のため、ニューヨーク大学医学部とコロンビア大学大学院で生物力学、老人学、カウンセリングを学ぶ。工業・環境デザイン、教育学、応用人間発達学にて修士号取得。3年間の変装後、ニューヨークにムーア&アソシエイション社を設立。人間の障害を通しての環境や商品、サービスの開発に取り組む。」前記著書によればパット・ムーアさんはこのような経歴の持ち主です。彼女の経歴の中で「?」がつくのが「3年間の変装」です。当時26歳の彼女は工業デザイナーとして、商品に対する高齢者のニーズを知ろうとしたことを出発点として、「年をとる」ということは年をとってみなければわからない→自分が年をとるまで待つことは出来ないというジレンマに陥ります。そしてテレビ局の「老け役専門」のメークアップ・デザイナーの女性と偶然知り合ったことが契機となり、外見だけではなく、早く歩くことも、真っ直ぐ立つことも、周囲が良く見えることも出来なくなるような様々な工夫を重ね、85歳のおばあさんとして3年間にわたり毎週末を公園や街角で過ごすに至りました。時にはギャングのような少年たちから殴る蹴るを遊んでいるかのように延々と続ける暴行を受けることもありましたが、それでも彼女は老人でありつづけました。その理由を彼女は次のように語っています。「1980年から81年にかけて、私は断固として老人の格好をし続けた。(中略)幾度と無く私はいらだちと怒りを感じた。― 老年の肉体的制限と弱さへの苛立ちと、若い人々が概して無神経に周囲にいる老人を無視したり、小ばかにしたような態度を示すことへの怒りであった。」彼女が「変装」を通して最も痛感したもの。それは高齢者が「高齢者」だというだけで周囲から全く別の、偏見に満ちた扱いを受けるということでした。その後、彼女はその経験から様々な場(学会や講演会、テレビ番組など)で、その偏見と周囲が無意識に示す態度こそが、老人を一番孤独にさせている原因であることを訴えました。前出の詩はそんな彼女にイギリス・ヨークシャーにあるアシュルディー病院の老人病棟の看護師から送られてきたものです。その病棟で一人の老婦人が亡くなり、彼女の持ち物を調べた看護師が詩を見つけ、非常に深い感銘を受けた職員たちの手でコピーが病院中の看護師に配られたというものでした。この詩は私たち高齢者介護に携わる者にとって、自らの矜持として常に心に携えておかなければならないものだと考え、掲載させて頂きました。
2.手作りのおやつ
【さつま芋入り羊羹】~画像が無いのは、撮影前に実物が食べられてしまったからです。(TT)~
(材料) (作り方)
・缶あずき 210g(1缶) ① さつま芋を茹でる。(賽の目に切ってから)
・小麦粉 大さじ2杯 (A)
③ あずきを②に混ぜる
・牛乳 大さじ1杯
④ ラップに③を乗せ、筒状にくるむ。(中身が出ないように上部で合わせる)
・さつま芋 中1本
⑤ 電子レンジで5分加熱
⑥ 熱いうちに型(ラップの箱22cmがちょうど良い)にラップごと入れて、
形を整えて、冷ます。
※ 在宅介護教室 (日時)8月28日(土)午後1:30~3:00 (場所)当施設 (テーマ) 上記参照
3.施設の風景
1)八雲神社春季例大祭
4月11日(日)に、施設近隣の八雲神社春季例大祭が行われ、囃子連によるお囃子、神輿連による神輿が巡行途中に当施設に立ち寄って下さいました。今年の春は寒い日が続いたのですが、この日はぽっかりと気温が上がって、玄関前には大勢のお年寄りが威勢の良い掛け声に歓声を上げていました。
4.施設からのお知らせ
1)夏の交流会
7月4日(日)午後0:00より、施設1階玄関前にて「お祭りひろば」を行います。やきそばやカキ氷などの軽食と、射的やヨーヨー釣り等の屋台を催します。夏の暑い季節ですが、ぜひお子様連れでお越し下さい。事前にチケット付のチラシをお配りいたしますので、当日はチラシをご持参下さい。
2)使用済みタオル
皆様から頂戴いたしました使用済みタオルですが、日々の排泄介助などの際に活用させて頂いております。一同心より感謝しております。そんな中で度々お願いばかりして恐縮ではありますが、衣替えなどに出ましたご家庭で不要となった使用済みタオルがございましたら頂戴できませんでしょうか。なにしろ使用量が多く、消耗が激しいものでして、いくらあっても直ぐに足りなくなってしまうのが実際です。宜しくお願い致します。 |
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