施設からのニュース

あかぼこ山

2007.09.15
あかぼこ山 45号


1.ドールセラピーのお話
 8月のある日のこと。2階のデイルームで、1人のお婆さんが1歳くらいの赤ちゃんをあやしていました。膝の上に乗せて、左腕で赤ちゃんの体を支えながら、右手で赤ちゃんの膝をポンポンと軽くたたいて唄を歌っています。それはとても優しげで柔らかい笑顔でした。しばらくすると、別のお婆さんがその赤ちゃんに話しかけながら廊下を歩いていました。いつもの困ったような不安げな表情ではなく、先ほどの方と同じく素敵な笑顔で。話によるとその赤ちゃんは某寮母が自宅から持ってきて置いてみた人形だそうで、予想以上の反応に持ってきた本人もびっくりしたそうです。人形の大きさは身長約70センチ、体重2000gくらいで1歳児程度のサイズです。抱いてあやしているところを見ると、体の揺れに合わせて首も微妙に揺れて、まさに「赤ちゃん」というような感じです。とりたてて奪い合いになることもなく、ある方が抱いて歩いていたかと思うと別の方が膝の上に抱いているといった具合で、赤ちゃんは常にお年寄りの暖かい視線の中ですくすくと育っているといった様子でした。そして数日たったある日のこと、赤ちゃんに異変が起こりました。いつものようにソファーで赤ちゃんをあやしている方の前を、またいつものように赤ちゃんを抱いて歩いている方が通り過ぎたのです。どちらの方の手にも赤ちゃんが抱かれています???。そうです、いつの間にか赤ちゃんが二人に増えたのです。先日赤ちゃんを持ってきた某寮母に聞いたところ「あたしゃぁ知らない。」とのこと。とにかく赤ちゃんは双子になりました。笑顔の方が増える事は非常に喜ぶべきことなのですが、一つ不安な事は、このままいくと赤ちゃんは三つ子、四つ子、五つ子・・・。育児問題が深刻にならなければいいのですが。
 ところで認知症の方々に人形がもたらす精神的な影響力を利用したケアに※「ドールセラピー」というものがあります。『The British Psychological society』の記事「Dolls and teddy bears applied to Alzheimer's」では、ニューキャッスル総合病院での調査をもとに、アルツハイマー型認知症の方々のケアにおける人形のもたらす影響について報告しています。報告では、@人形を前にした認知症の方々にとって、人形は(我がもの)で、しかも(自分に責任のある)「存在」として、「心を触れ合う」・「面倒を見る」といった対応を求める働きがある。A人形との関わりの中で次第に動揺や苦悩を軽減し、コミュニケーション困難や引きこもりを克服することに役立っている。B人形を用いる事は(親なら持っているような)「生命役割の記憶」を刺激する為の回想シナリオを含んでいる。C認知症の方々にある不穏行動などに対する重要で非薬物的な接近方法である。と伝えています。(英文をもとに要約しましたので、誤訳があればお許し下さい(~_~;))以前どこかで、人間の赤ちゃんの表情やしぐさは親に対して保護して世話をする衝動を起こさせる働きをしていると聞いたことがあります。そうならば同じ理屈で親にはその行為を行うことは恐らく「快さ」の刺激となっているはずです。但し本当の赤ちゃんならば語りつくせない苦労を伴いますが、人形ならば夜泣きもしませんし「なすがまま」です。人形が認知症の方に同様の刺激を与えていて、その為の感情が想起され、育児・保護をする行為のうちに快い感情や心の安定をもたらすというならば、それも決して理解しがたい話ではないように思われます。
 ソファーに座っている「赤ちゃん」を、あるお婆さんがポイッとはじき落としてしまいました。するとそばにいたお爺さんが「たいへんだ!」と慌てて抱き上げて、「お〜よしよし」と頭をさすっていました。また、いつも廊下を切なげに歩き回っている別のお婆さんは、安心した表情で赤ちゃんと一緒に布団に入っています。皆さん色々と食べさせようとしてくださるので、赤ちゃんの口の周りはベトベトです。着替えさせようと脱がせてくれるのはありがたいのですが、いつの間にか赤ちゃんの服が見当りません。今日も施設の赤ちゃんは大忙しです。ところで、老人ホームでこんなお願いもなんですが、施設のお近くの方で70サイズの乳児服のお古がありましたら頂けませんでしょうか。            
(上の写真は、もう赤ちゃんを手放せなくなってしまった男性の後姿です。赤ちゃんに何か楽しげに話しかけています。)
※「ドールセラピー」(Yahoo!辞書より)
 高齢者介護の一手段。認知症の高齢者に、赤ちゃんの人形を抱かせることで元気になってもらおうという方法。高齢者は家庭でも施設でも役割を失って、世話をされるという受け身の生活に追いやられている。それまでの長い間、家族のために懸命に働いてきたのに、その立場が逆転するのは本人にとって耐えがたい。とくに認知症の場合、周囲に理解されないいらだちは徘徊などさまざまな行動につながり、生活に不安をきたすという。そうした人に赤ちゃん人形を渡して世話を依頼すれば、自分はまだ受け身ではなく、人形の世話をする立場にいるとやる気を起こすのだという。赤ちゃん人形を抱きしめ、散歩に連れて行くことで、誰からも笑顔で話しかけられるようになり、共通の話題も見つけやすくなるとか。

2.俳句
    彼岸花 待って嬉しい 長月の日々    (中野幸子様)

    銀杏木葉 踏むこと長き 画聖展     (小嶋英子様)

    風に揺れ なよなよなびき 楚々と咲く
              秋を彩る 秋桜の花   (竹鼻貞子様)

3.施設の風景
1)夏のお散歩は意外と大変です(-_-;)
 参加される方々が楽しみにしていて下さる「お散歩クラブ」ですが、虚弱な方々ばかりの当施設では、陽射しが厳しい夏の間は外に出ることも儘ならないことがあります。そんな季節には逆に涼しいところで一休みとばかりに一足伸ばします。7月は瑞穂モールのスターバックスで、「なんとかかんとかフラペチーノ」(名前が長いので正しい名前は覚え切れません)というものを味わってきました。広い店内はもとより、おしゃれなパラソルの下で、聞いたことも無いような名前の冷たいものを口にして、皆さん少し興奮気味。店のロゴ入りの紙ナプキンや使い捨てのスプーンなどを「記念に」と持って帰る方もいらっしゃいました。
 翌8月はさらに暑さがつのっていました。今度は河辺駅前の東急のパン屋さんで売っているカキ氷を食べに行きました。今度はなにせ「カキ氷」ですから安心して口に出来ます。「練乳入りいちご」のカキ氷は陶器の器に盛ってあり、涼味たっぷりでした。さてカキ氷はどのように食べるのが上手な食べ方なんでしょうか、意外と人それぞれに一言あるようです。「上からざくざく食べるとこぼれるし、練乳がなくなる。」とか、「穴を掘ってシロップで少し溶かしながら食べるのが美味しい。」とか。建設途中の駅前デッキを眺めながら、色々意見を交わしていました。9月はあきる台公園と日高の巾着田へ出向く予定です。
2)夏のメニュー
7月 「素麺となす」 
 素揚げのナスと素麺という、とてもシンプルなメニューです。これだけの量の素麺を1回で茹でてしまおうというチャレンジでしたが、結果は少し残念(T_T)/~~~
でも氷を浮かべた器に浮かべた素麺は、皆さん喜んで頂きました。
8月 「夏野菜と豆のストゥラコット」
 名前を聞いても何の料理だかさっぱりわかりません。豆ときゅうり、ソーセージの入ったトマトベースの野菜スープのようなものと言えば少しは想像して頂けますでしょうか。お年寄りの仕事は、ひたすら野菜を刻むことと煮込む間を待っていること。ちなみに、真中の写真で鍋の番をしている女性は友田小学校の先生です。新任教員研修の一環として、当施設で3日間頑張って頂きました。もちろん先生は鍋の番ばかりしていたわけではなく、昼食のお手伝いやらお風呂の介助やら、その他あれもこれもと目一杯こき使ってしまいました。今後のご活躍を応援させてください。

4.施設からのお知らせ
1)在宅介護教室を行います。
  (日時)  9月29日(土) 午後1:30 〜 3:00
  (場所)  カントリービラ青梅2階食堂
  (テーマ) 「移乗、移動介護のポイントとその実際」
          ベッドから車椅子、車椅子からベッドなど、介護する上で要介護者の移乗、移動介助は避けることの出来ない介助場面です。また、骨折や落下事故など介護事故も起こしやすい介護作業でもあります。今回は参加された方々にも実際に体験して頂き、基本手順や留意点などをご理解頂きたいと思います。
  (その他) @ 参加費無料。ご希望の方は直接会場までお越し下さい。
        A 午後1時10分に東青梅駅南口に送迎車を出しますので、ご利用下さい。
2)ボランティア募集
  (内容)   書道クラブの指導 
          認知症や片麻痺の方々が約10名様ほど。皆さん震える手先を精一杯使って頑張っています。今までお願いしておりましたボランティアの方がご都合によりお辞めになりました関係で、どなたかお年寄りのお相手をしてくださる方を探しております。御協力お願い申し上げます。
  (活動日時) 第1・第3火曜日 午前9:00〜11:00
  (その他)  1)お問い合わせは当施設(пD0428−23−6233)生活相談員(小嶋・比留間)まで。



特別養護老人ホーム カントリービラ青梅