■ 2007.07.15号
1.脱水症を防ぎましょう。 夏です。夏といえば強い陽射しにカキ氷。学校も夏休みを迎えて子供たちは大はしゃぎ。一方で「夏休みを迎え、各地に子供連れの観光客が訪れ・・・」などというニュースにため息をつき、朝から耳にワンワン響く蝉の鳴き声を恨めしげに見上げ、「盆暮れ正月、おまけに夏のバカンスが無いのがこの仕事のいいところだ!」と心にも無いことを自分に言い聞かせながら、へたりそうな足をひたすら前に進めている今日この頃です。でも「こんな事を言っていたら365日、24時間を介護から離れられない人達に失礼かな。」なんて少しは自己嫌悪も。でもやっぱり羨ましい!(T_T) そんなことはどうでもいいのですが、夏といえば高温・多湿。自宅で介護する方にはご苦労の多い季節です。ところで、この高温多湿の季節にぜひ気をつけていただきたいものに「脱水症」があります。「あれ、前にも見たぞ?」とおっしゃる方は「あかぼこ山」の愛読者(?)の方で、実は3年前の29号に掲載したことがあります。主な内容は以下の通りですが、お年寄りの介護にとって脱水症予防は大切なことですから、何度でも掲載してより多くの方にわかっていただきたいと思っています。決して締め切りに間に合わないから以前のネタでお茶を濁しているのではありません(~_~;)。 脱水症とは 体内の水分が急激に少なくなることによって、病的な症状が現れることです。これは水分およびナトリウム(Na)が補われる以上に失われることにより起こります。脱水症には@水分の欠乏と、ANaの欠乏に分類されますが、臨床的にはB両者の混合タイプとして取り扱うことが多く、分類にはあまりこだわりません。「老化は乾燥の過程である。」と言われることもあるとおり、高齢者になるとたやすく脱水症に陥りやすいということを知っておかなければなりません。 (1)人間の身体の水分必要摂取量と排泄量 元々人間の身体組織の約60%が水分から構成されています。下表は室温28度の状態での1日の水分量の出入りを示しています。
※ 皮膚・肺:不感蒸泄、発汗、呼吸による皮膚、肺からの排泄。 糞便 :糞便中の水分、再吸収されない消化液。 燃焼水 :細胞内のエネルギー代謝物として産出される水分。 ※ 不感蒸泄:皮膚と肺からの呼吸による水分排泄 ※ 必要水分量:35(ml/kg)×体重(kg) 例)体重50kgの方:35×50=1750ml(但し体温が1℃上昇するごとに150ml増加します。) (2)高齢者に脱水症が生じやすい原因 @水分の摂取不足 ・頻尿や尿失禁を恐れて飲水制限をしてしまう。・渇中枢の機能低下により、口渇感の減弱がある。・認知症などによる意識(飲水)の低下、水分摂取が出来にくい状態になる。・嚥下障害により飲水量が低下する。・食欲低下をきたす基礎病態の出現。・下痢、嘔吐の時、繰り返すことを恐れて飲水制限をしてしまう。等々 A水分を貯蔵することが出来ない細胞の割合が多くなり、若年層より水分代謝のバランスを崩し易くなっています。 B体内の水分減少 ・加齢による基礎代謝の減少により、細胞内でのエネルギー代謝産物として出てくる水分(燃焼水:上表参照)が減少します。 C水分排泄の増加 ・腎機能低下(尿濃縮力の低下)のため、薄い尿を多く排泄してしまう、また高カルシウム血症や高血糖により、尿が出すぎる状態となるなど必要以上の水分を尿として排泄してしまう場合があります。また利尿剤などを服用している場合なども注意が必要です。 (3)脱水症の兆候(発見のサイン) 虚弱な高齢者など、体調の不良を自ら訴える力の低下している方々の場合、介護者が脱水状態を見落としてしまうことも考えられられます。しかしこの状態を放置すると血液濃度が高まる、高血糖状態となる、血液が固まりやすくなるなど脳梗塞や糖尿病の昏睡状態の引き金ともなり、生命にかかわることもあります。そのため、介護者は日常の介護場面で次のような兆候に気をつけるようにして下さい。 @口渇感があり口唇、舌が乾燥します。特に舌は兆候が顕著で、ガサガサな状態になります。 A皮膚がパサパサに乾燥したり、弾力の減少が現れます。(腋の下などの湿り気が無くツルツルする状態など) B食事、水分摂取量が少なく、尿量の減少があります。 C発熱、頭痛、めまい、頻脈、低血圧などの体調不良状況を示します。 D時に意識障害、せん妄、幻覚、痙攣などの症状が出現することがあります。突然ボケてしまったように見えます。 (4)水分補給の実際 @意識があるとき:上記表1を参考に、水分摂取必要量を経口的に補給します。 ・発熱があるとき 高熱は水分消失量が増大するため解熱を図る。(但し疾病により対応が異なる場合があるため、医師に相談して下さい。) ・下痢、嘔吐のあるとき ミネラルイオン飲料またはスポーツドリンクを薄めて使用する。1回の補給量は少なくして、30分〜1時間間隔で回数多く補給する。なお、嘔吐、下痢の回数が多い時は医師に相談して下さい。 ・嚥下反射が弱っているとき 嚥下に困難性を抱えている高齢者に対して、通常の水分での水分補給は困難な場合が少なくありません。トロミ添加剤(市販)を使用する場合もありますが、より喉どおりが良く、摂取しやすいものに水分補給用のゼリーを用いる方法があります。 (材料) @水または麦茶(ほうじ茶):1リットル A粉ゼラチン:15グラム B砂糖:60グラム (作り方) @水または麦茶(ほうじ茶)を沸騰させ、粉ゼラチン・砂糖を混ぜ合わせる。 A1回分(200CC程度)の入れ物に小分けし、冷蔵庫で1日冷やす。(ゼラチンは固まるまでに1日は必要です。) ・ミネラル飲料やスポーツドリンクを嫌う場合 味噌汁、スープなど好みのものを代用。なお、一時的対応の場合にはソフトドリンクやゼリー、プリンなどでも可能です。 A意識の無いとき 経口的な補給が困難であるため、点滴による補液が必要となるため、医療機関での対応となります。 (5)糖尿病を持つ方の脱水防止 通常の食事が出来ない状態、通常の食事は出来るが発熱・発汗が続いている状態など、症状により補給する水分内容が異なってくるほかに、時間ごとの血糖チェックなども必要となります。脱水症の症状が現れていたり、充分量の摂取が出来ない時にはまず主治医に相談しましょう。 (6)その他 心臓病や腎臓病のため水分摂取制限が必要な方の場合、医師からの説明を受け、その人に必要な量の水分補給を行うことに心がけてください。 2.俳句 今回は3名の方から、以下の句を頂きました。 一世を風靡(ふうび)し人の 花と散る (小嶋英子様) 涼しさを 待って夢見る 夏の日々 (中野幸子様) 多摩川の 水面を走る 波静か (竹鼻貞子様) 3.施設からのお知らせ
7月1日(日)に、施設行事「夏の交流会」が行われました。当日はたくさんの方にお越し頂き、誠に有り難う御座いました。写真はビアホール会場で撮影したもの。ご家族同士がひとつのテーブルを囲んで和気藹々ですね。1階のお祭り広場でも、近所の子供たちが集まって、風船ヨーヨーつりや金魚すくいに元気な声が響いていました。 |