2006.10.15号
あかぼこ山 40号



1.            住民税と障害者控除

 今年の夏に近隣のお寺の施餓鬼(おせがき)に伺った際、「介護保険料がずいぶん高くなったよ〜。」「おたくも?」等の声がいくつも聞こえてきました。これは税制改正に伴い、高齢者控除の削減(所得が125万円以下の方は住民税非課税という規定が廃止)が行われたため、

住民税課税対象者が増加したことによります。しかも住民税が上がるだけではなく、所得階層が変更されるため、その他の国民健康保険料や介護保険料にも波及し、雪だるま式に負担が増えるということになります。ところでこの負担増に対して、「障害者控除」を申請することで負担額を軽減させることが出来る場合があると耳にしました。障害者控除とは一般的には障害者手帳を受けている方ということになりますが、手帳を持っていなくても@常時寝たきりで介護を要する。A障害者に準ずる者として市町村長などや福祉事務所等の認定を受けている。などに該当する場合に控除の対象となるため、介護保険の要介護認定を受けていると障害者認定を受けられる場合があるとのことです。この場合必ずしも寝たきり状態で無い場合でも認められるケースがあるそうです。また納税者本人や家族に障害者がいる場合には「障害者控除」を受けることが出来る、また寡婦(夫)の基準に該当する方の場合では所得が125万円以下の方は非課税扱いとなる等の場合もあるとのことですので、今回住民税、国民健康保険料や介護保険料が高くなり、さすがに「重い」と感じる方は一度役所に相談、申請を行うことを検討してみては如何でしょうか。

2.            高齢者虐待防止について

 私達介護の仕事をしている者にとって介護予防制度開始に勝るとも劣らないほどのインパクトを与えた出来事に、今年8月に明らかになった特別養護老人ホームさくら苑での高齢者虐待事件がありました。事件の概要は報道等で広く伝えられましたのでご存知のことと思いますが、録音されていたその内容が人倫に悖る内容であっただけにより衝撃的でした。これまでも介護施設での入居者に対する暴行事件などが伝えられることがありましたが、それらは表面に現れた「事件」(点)として伝えられていました。ところが、今回のさくら苑での出来事は高齢者の人格を擁護すべき介護現場で生じていた「体質」(面)が表面化したものとして報道されました。

在宅介護の現場で介護ハラスメントの事例に出くわすことがあります。暴力やネグレクト(放置・無視)などは承認しうるものではない事は確かですが、そこには家族間の歴史・背景や介護環境などの「事情」があります。例えば認知症の高齢者を在宅で介護している場合、住宅設備面で屋外への徘徊を阻止することは困難です。不潔行為がある場合には汚染されるのは家族が共に使う自宅の畳やカーテンです。しかも当然なことですが、介護を担う家族には介護以外に日常の生計を支えなければならない仕事があります。たとえ介護サービスを限度額いっぱいに使っても精神的・身体的疲労感から逃れられるわけではありません。例えばここに介護の必要な両親と長男一人が同居して暮らしていたとします。仮に彼は両親の世話と仕事の明け暮れで婚期を逃してしまっていることを気に病んでいたとしたらどうでしょうか。元来生真面目な彼は、それでも仕事と介護の毎日をあきれるほど真っ直ぐにこなしていました。その日の夕方、家で待っている両親の世話を思い、憂鬱になりながら疲れた重い足で家路を歩いていました。ふと目を上げるとクリスマスのプレゼントを抱えた如何にも楽しげな親子連れの姿が目に入りました。すれ違いざま彼は吸い付けられるようにその光景をつい目で追ってしまいました。そして帰宅した時、こともあろうに認知症の父親が不潔行為をしており、それを病身の母親に責められて興奮状態になっていました。彼は慌てて後始末をしようと便にまみれた父親に走りよりましたが、その父親が介護拒否をして暴れたとしたら……。一方、介護施設は業務として介護を行うスタッフがおり、設備は介護作業を前提に造られており、備品も揃っています。たとえ施設の労働環境がどうであれ、在宅介護のような介護ハラスメント引き起こす事情は客観的には希薄になるように出来ていますし、それが介護施設の一つの面での優位性でもあります。前出の長男の心情を思えば、業務として介護を行っている者の矜持として「何をなすべきで何をなさざるべきか」は極めて明瞭なはずです。にもかかわらず今回のような事件を起こした介護職員の行為、その土壌となった職場風土の掌握を怠った管理責任はどう評価されるべきなのでしょうか。

今年4月に「高齢者虐待防止・養護者支援法」(以下「高齢者虐待防止法」と略)が施行されました。高齢者虐待防止法は虐待の防止と養護者への支援を目的として、国民や国、地方公共団体(都道府県及び区市町村)の責務を規定しています。その中では介護施設で介護業務に従事する者等による虐待についての取り扱いについては次のように定めています。

@ サービスを利用する高齢者に対して行う虐待についての規定。

A 介護従事者個人に対する高齢者虐待を発見した場合の区市町村への通報義務。

 B 管理者に対する区市町村の対応窓口の周知義務。

 C 通報を受けた区市町村による事実確認、高齢者の安全確認・保護など、老人福祉法、介護保険法の権限の適

切な行使。

 D 区市町村から都道府県への報告、及び都道府県による虐待状況や措置についての公表。

          E 事業所の設置者による苦情処理の体制整備、虐待防止のための措置、積極的な取り組みについての義務。

制度そのものを見ると、虐待を取り締まるために全ての国民が告発者になることを義務付けられていて、その告発内容をどのような手順で取り扱うかを定めたものになっています。確かにこれまで虐待のあることを見かけていながら、それをどうすればいいのかが定かでないため、消極的にも放置されていた事実はあるでしょう。事業所内でも放置できない行為を知っていても、事業所で問題にすることに憚りがあったり、うやむやになったりしていたこともあるでしょう。ですからそれぞれの責任を明確にし、具体的に対処する道筋を整備したことの意義は大きなものだと思います。ただ大切なことは虐待行為を未然に防止できるよう、介護を十分に支える仕組みを充実させることであるのは明らかなことです。(「要介護認定における『不潔行為』とは『便を弄ぶこと』で、オムツに手を入れて付いた便をあちこちになびったり、オムツを外して動いてしまうために便まみれになってしまうことは「不潔行為」には該当しない。」などとは言ってほしくはないのです。どちらにしろ便で汚れた壁やカーテンを掃除することには変わりは無いのですから。)「あなたの行為は法に規定されている虐待です。虐待は止めなさい。」という説諭で済むものではないでしょう。ともあれ、私どもの施設でもたとえ小さなものでも虐待などが決して起こることの無いよう努めなければなりません。「苦情処理」や「虐待防止体制」、「虐待防止マニュアル」なども大切なことには変わりありませんが、あくまでそれらは形式的なレベルのものです。肝心なことは日常の介護作業ひとつひとつが高齢者とその家族を支えているという職業的介護職としての矜持を、集団として、個人として、強く心に刻んでゆくことです。今回の事件を通してあらためてそのことに向き合う機会にして行きたいと考えております。

3.            施設の風景

@ 巾着田

お散歩クラブで埼玉県日高市にある「日本一の曼珠沙華群生地 巾着田(日高市)」に行ってきました。いつもながら当日になっていきなり行き先が変わるといういい加減さの中、車2台に8人のお客様の参加で出かけてゆきました。巾着田は高麗川が蛇行した場所に形作られ、日和田山からみると巾着の形に似ているところからその名前がつき、その川岸一帯に曼珠沙華の球根が漂着し、自然に群生地を形成して現在に至ったとのことです。幅は50m程度ですが、川の流れに沿って延々と真っ赤な曼珠沙華が続いています。遊歩道を車椅子で散策しましたが、目にしみるような赤と緑の茎とのコントラストに、みなさんとても満足されたようでした。同じ管理地内にコスモス畑もありました。そちらも満開で、帰りの車窓から楽しんで頂きました。ところで、当クラブ担当の I寮母さんがこの前々日に急逝されました。いつもクラブのことでは張り切って頑張っていらっしゃいました。この場をお借りしてご冥福をお祈りさせて頂きます。

A 運動会

友田小学校から運動会へのご招待がありました。児童の皆さんがそれぞれに作った招待状を届けてくださいました。B5版の用紙には表紙の絵が描いてあり、見開きの中はお手紙になっていました。その中の一つを紹介いたします。「カントリービラ青梅のみな様へ 私たちは友田小学校の6年生です。私たちはカントリービラのみなさんにも見ていただきたいと思い、この招待状を贈りました。私たちはプログラム15番の組体操を見ていただきたいと思います。」当日はあいにくの曇り空でしたが、用意して頂いた「敬老席」で元気な子どもたちの頑張る姿を観覧させて頂きました。観にいけた方はわずかな方々でしたが、施設で動けない方々の分まで頑張って応援させて頂きました。(写真は棒引きの様子です。)

4.            施設からのお知らせ

@ ご家族懇談会

  毎年この時期に、ご家族様と直接の意見交換の場としてご家族懇談会を開催させて頂いておりますが、本年も下記の要領で開催させて頂きます。ご多忙中とは存じ上げますが、何卒ご参加くださいますようお願い申し上げます。

 (日時) 2006年11月5日(日) 午後1:30〜3:00

 (場所) カントリービラ青梅2階食堂

A 車椅子押しのお願い

  毎月第4火曜日の午前中にお散歩クラブを行っていますが、その際に一緒に車椅子を押すお手伝いをしてくださる方がいらっしゃいましたらお願いいたします。難しい操作はございませんので、どなたでもご参加いただけます。お問い合わせはお気軽に当施設生活相談員(小嶋・比留間)まで。よろしくお願いいたします。