2005.07.01号
あかぼこ山 35号



1.『介護予防読本』をご存知ですか?

来年度から介護予防制度が始まるにあたり、介護保険制度改正のポイントについていくつか紹介してきましたが、この制度への理解を広めようとして東京都が編集し各市区町村が発行しているものに『介護予防読本』という冊子があります。もう御覧になられたでしょうか。今回の介護保険制度の見直しに対する賛否は別にして、この介護予防読本は「老人と呼ばれるのはまだちょっと、ねえ。」という方々や「歳はくってるが、まだまだ他人の世話にはなる気は無い!」という方々には、ぜひご一読をお願いしたい冊子、と言うより「介護保険の最初から一番力を入れて取り組む必要のあったものを今になって出してきた。」ような冊子です。全体は第1章から第3章までで出来ており、主な内容は次のとおりです。

(第1章)「関係ない」は今のうち 〜中年期にも潜む寝たきりへの危険因子〜

   要介護状態に陥る主要な原因を男女別にあげ、その要因が生活習慣病に大きく由来していることを指摘し、中年期からの生活習慣病予防のための日常的な具体的予防対策を例示。70歳でエベレスト登頂を果たした三浦雄一郎さんの手記なども紹介しています。

(第2章)「からだ」と「あたま」を鍛えよう! 〜高齢期の心身の衰えに立ち向かう〜

   介護予防検診「おたっしゃ21」を紹介しています。「おたっしゃ21」は自分では気づきにくい危険な老化のサインを判定する検診で、65歳以上の方々が対象となります。「要介護状態になる前」から「要介護状態にならない」ための働きかけという介護予防制度の中心部分です。

   検診からサービス提供までの主な流れ 

介護予防検診(リスクの発見)→アセスメント(個別評価)→個別プラン作成(介護予防プラン)→介護予防に基づくサービスの提供→効果測定・評価

   また、老化と要介護状態との関わりで、重要な要素となる転倒(骨折)、失禁、咀嚼嚥下能力低下、栄養不良、認知症(痴呆症)、老人性うつ症などの解説と、予防対策(筋トレの方法や認知症予防のトレーニングなど)を紹介しています。

 (第3章)いきがい、ふれあい、ささえあい 〜積極的な暮らし方のすすめ〜

    体と心が元気であるためには毎日の暮らし方が大切であるとの観点から、高齢期を迎えた方々へ意欲ある生活についてのアドバイスと、自分の力で暮らしを支えること、社会参加(地域活動や就業その他)、生涯学習、ボランティア参加などの事例を紹介しています。

※『介護予防読本』当施設にも配布用を備えておりますので、ご希望の方はお気軽にお声掛下さい。

  現在、介護サービスを利用していて、今度の「改正」で従来利用していたサービスを利用できなくなる、またはなんらかの変更をせざるをえなくなる方々には、「それでは済まない現状があるのがわからないのか。」と『介護予防読本』の内容には承服しかねることもあるかと思います。上でも述べましたが、介護予防制度の内容は介護保険開始時に真っ先に取り組むべきだったもので、制度の運営も健常者を含めた介護予防全体のシステムの中に、要介護者へのサービス体系を順次構築してゆく慎重さが必要だったのだと思います。それを、従来福祉的あるいは医療的に行なわれていたものをそのまま介護保険に置き換えて、民間に投げ出したために生じた深刻な事態であり、トラブルだと言えるのではないでしょうか。但し、この『介護予防読本』の内容を、単なる泥縄を糊塗するための手段とするのではなく実効性のあるのもとして運用するならば、10年後には大きな効果が期待出来るのではないかと思います。


2.施設の風景

@ ローズフェスティバル :
5月20日に都立神代植物公園(調布市)へ出かけました。園内はつつじ、牡丹、しゃくやくなどの色様々な花でいっぱいでした。中でもバラ園はローズフェスティバルの真っ最中、広いバラ園は赤、黄、緑、青、紫、ピンク…数え切れないほど沢山の色の洪水!そっと近づくとほのか感じる花の香りは、何か特別なものに感じるほどでした。ところで、行事の予定日がずれてフェスティバルと重なったのは幸運でしたが、園内は薔薇よりも人の数のほうが多いのではと思うほどの人・人・人、通路はカメラのスタンドだらけ。2週間前に下見がてらに見て歩いた時とはすっかり様相が違っていて、お年寄りには少しあわただしかったかもしれません。それでも皆さん笑顔いっぱいで楽しんでいらっしゃいました。

A 鱒釣り 
毎年6月になると、「鱒釣り」が行なわれます。奥多摩フィッシングセンターの生簀(いけす)で鱒を釣り上げて、それを木漏れ日の下で唐揚げにして食べるのですが、初夏の紫色の空に陽射しで透ける木々の緑が目にしみるような中で、大きな声を谷あいに響かせながら釣りを楽しみました。生簀ですから糸を垂れるそばから鱒が喰いつきます。でも問題はそれから。最初のチョンチョンで上げてしまうとダメ。ググ〜っと来てから合わせるのですが、遅すぎると今度は針が鱒の腹の奥。ですが釣れないより釣れた方がいい訳で、時間をかけて、手ごたえを十分味わって頂いてから竿を上げにかかります。ですから付き添い職員は魚が飲み込んだ針を外す為に、あっちでこっちで鱒の口とにらめっこ。それでも鱒が水から上がるその瞬間の表情は、皆さんとても活き活きとしたいい顔をしています。

B クッキングクラブ 

今年のクッキングクラブは「男の料理は直球ど真ん中!」と題して、男性職員3人で行なっています。包丁を持つ手付きを見る限り、日頃の家庭での様子がよく判るような3人ですが、ここまでの所は意外と好評です。4月は「餃子の皮を使ったピザ」、5月は「シュウマイ」、6月は「本格中華まん」でした。下ごしらえは職員で行ないますが、後はお客様次第。例えば中華まんですが、丸めた生地をお皿の上で伸ばして、餡をのせて包んで頂きます。片麻痺の方など四苦八苦していますが、仕上がりは意外ときれいに餡を包んであったりします。またうっかり目を離すとそのまま口に入れそうな人がいたりと油断は出来ませんが、回を重ねるごとに参加者は確実に増えています。ちなみに毎回余った材料でついでに作るスープが密かな人気裏メニューです。7月は素麺と天麩羅だそうですが、はたしてどうなるのでしょうか。

3.施設からのお知らせ

 @ ご家族懇談会開催について

 「あかぼこ山」紙面、報道等で既にご承知とは思いますが、6月に国会で可決されました介護保険法の改正に伴い、平成17年10月より、介護老人施設の利用料等が改正されます。内容は@ホテルコスト相当分が自己負担となる(水光熱費相当分:1万円を上限)A食費が自己負担となる(48,000円が上限)B要介護度毎の単価が改定される。というものです。(なお、@Aにつきましては補足的給付制度を利用出来ます。また全体の金額の詳細については現時点では行政から明示されておりません。)これに伴い、当施設入所契約の一部変更に伴う手続きが必要となります。これにつきましては下記の日程でご家族懇談会を実施いたしますので、その場でご説明、ご質問等を受けさせて頂きたいと考えております。つきましては何卒、ご家族懇談会にご出席いただけますようお願い申し上げます。(別途、後日ご案内通知をお送りさせていただきます。)

(日時) 9月4日(日) 午後1:30〜3:00  (場所)カントリービラ青梅

 A 在宅介護教室のお知らせ

 3ヶ月ごとに開催しております在宅介護教室ですが、参加された皆様から頂いたアンケートで希望の多いのがやはり排泄介護に関するものです。今回は昨年度も行ないました、排泄介護について再度取り上げて参りたいと思います。前回参加されなかった方、もう少し詳しく質問して見たい方など、多くの方々のご参加をお待ちしております。

(日時) 8月28日(日) 午後1:30〜3:00 (場所)カントリービラ青梅2階食堂

(テーマ)「排泄介護〜寝たきりの方への排泄介護の実際」

 B 「夏、体験ボランティア」について

 毎年、夏休みを利用して社会福祉協議会主催の「夏、体験ボランティア」の募集がおこなわれます。小学生から大学生、社会人まで幅広い年齢層の方々にボランティア活動を体験していただこうという取り組みです。活動の場は主に地域にある保育園、老人ホームなどです。当施設も受け入れをさせていただいておりますので、ぜひこの機会に御参加ください。申し込み窓口は青梅ボランティア・市民活動センターです(電話23−7163)。

4.こぼれ話

 先日の夕方、施設に迷子がやってきました。その男の子が判っているのは自分の名前と父親の名前、マンションの名前。自宅は羽村市役所の近くだというので、施設長の「送っていってあげなさい。」の一言で、車に乗せて行きました。彼の記憶の端々から出てくる名称を辿りますが、さっぱり判りません。仕方が無いので小作駅前の交番にすがりましたが、ようやくその子の家がわかったのは夜の8時頃。「よかったな〜」と彼と手を取り合ってしまいました。ところで、どうして彼が施設に来たのか。どうやら彼が施設の近くで道がわからず困っている時に、どなたかが「カントリービラへ行くように」と場所を教えたらしいということでした。少しは地域のお役に立っていることが実感できた出来事でした。