2005.03.15号
あかぼこ山 33号



1. 介護保険法改正と老人ホーム

 既にご承知のことと思いますが、介護保険法の制度改正が行なわれ、平成18年4月1日から施行される予定になっております。今回の「あかぼこ山」では、その改正の概要と改正に伴い私たち老人ホームにはどのような影響があるのかについて触れてゆきたいと思います。

1)改正の概要

厚生労働省老健局「介護制度改革関連法案の概要」によると、以下がその主要な柱となっています。       (表1)

@予防重視型システムへの転換

A施設給付の見直し 

B新たなサービス体系の確立

Cサービスの質の確保・向上

D負担のあり方、制度運営の見直し

E被保険者・受給者の範囲

Fその他

この中で、制度改正の中心的な位置をしめるものが@の「予防重視型システムへの転換〜新予防給付創設」です。
2)新予防給付の創設

 この創設の主旨は「介護保険法の理念である『自立支援』をより徹底する観点から、軽度者に対する保険給付について、現行の『予防給付』の対象者の範囲、サービスの内容、マネジメント体制等を見直した新たな予防給付へと再編を行なう。」というものです。これまでの制度では、要介護認定で要支援〜要介護度5までの認定を受ければ、原則的に殆どの介護サービスを利用することが出来ました。しかし、「軽度者にとって却って自立を妨げるようなサービス利用があり、自立支援という主旨に必ずしも合致していない現状が生じている」との認識に立ち、従来の「要支援」認定該当者全体と「要介護度1」認定該当者の一部(※:要支援、要介護度1全体の7〜8割になる見込み:「読売新聞」12月20日)を介護保険給付の対象から新たに設ける新予防給付の対象者へと移行させ、そこで新たなケアマネジメント・サービス体制(従来のサービス内容の見直し・新たなメニューの追加等)により、効果的に自立支援が図れるよう援助するという内容になっています。具体的には以下の3点になります。

@     新予防給付の該当者に関するケアマネジメントを、従来の居宅介護支援事業所から新たに設ける「地    包括支援センター」に移し、市町村を責任主体とした、要支援・要介護状態になる以前からの一貫した介    護予防ケアマネジメント体制を確立する。

A     既存サービスを生活機能の維持、向上の観点から内容、提供方法、提供期間等を見直す。(単に生活機    能を低下させるような家事代行型の訪問介護については原則行わず、ヘルパーと一緒に自立することを目    的に行うメニューに変更する等。)

B     筋力向上、栄養改善、口腔機能向上などを新たにサービスメニューとして加える。

なお、新予防給付の施行に際しては次の経過措置が設けられることとなっています。

@     地域包括支援センターの体制整備が整わない市町村は、平成19年度末までに条例で新予防給付の施    日を設けることが出来る。

A     施行日以前に既に要介護認定を受けている場合は、その要介護認定の有効期間中は従来の給付を受ける    ことが出来る。

B     施行日前に介護保険三施設に入所している方は、施行日以降に新予防給付の対象者となっても平成20    年度末までの3年間は引き続き入所できることとする。

3)施設給付の見直し

 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)を含む介護保険三施設では、「在宅と施設の利用者負担の公平性、  介護保険と年金給付の調整の観点から、低所得者に配慮しつつ、介護保健施設などにおける居住費、食費を保  険給付の対象外とする。」(前出老健局資料)として、居住費、食費それぞれに自己負担の基準となる金額が  設定されており、合わせて低所得者への対策として補足的給付が行なわれることとなっています。また、 この  分野に限っては施行を遡って平成17年10月からと予定されています。具体的には次のとおりです。

@     居住費

施設や居室の形体から、居住費として次の費用が自己負担分となります。               (表2) 

施設形体

自己負担の範囲

月額

個室・ユニット型

減価償却費+水光熱費相当

60,000円

準個室(非ユニット型個室・ユニット型準個室)

減価償却費+水光熱費相当

50,000円

多床室

水光熱費相当

10,000円

当施設は「多床室」に該当しております。

A 食費

   食材料費+調理コスト相当=月額48,000円(モデルとして提示されています。)

     食材料費は現在すでに単価1日780円として自己負担になっております。

     このモデルでは食費は1日1,600円になります。現在の単価1,920円と比較すると1日320円の減額となり、施設の収入面から見ると、当施設では年間およそ11,600,000円の減収となります。

C     補足的給付

   居住費、食費については、介護保険料負担の「見直し後」の第1段階から第3段階に該当する方々(表3)が給付を受けることが出来ます。また、それぞれの給付額は(表4)のとおりです。


介護保険料

 

 

(表3)

 

 

 

 

 

現行

見直し後

 

第1段階

生活保護等

第1段階

生活保護等

低所得者対策の
対象

第2段階

市町村民税・世帯非課税

新第2段階

市町村民税・世帯非課税

高齢者本人の年金収入が80万円以下

であって年金以外に所得が無い

新第3段階

市町村民税・世帯非課税

第2段階に該当しない

第3段階

市町村民税・本人非課税

新第4段階

同左

 

第4段階

市町村民税・本人非課税                     

本人の合計所得金額が一定金額未満

新第5段階

同左

 

第5段階

市町村民税・本人非課税                      

本人の合計所得金額が一定金額以上

新第6段階

同左

 





2

給付額

(表4)

補足的給付額  補足的給付の基準額 − 負担上限額

(A)

補足的給付の基準額 居住費用 食費
個室 60000 48000
準個室 50000
多床室 10000
 

 

(B)

負担上限額 居住費用 食費
第1段階

個室

25000

10000

準個室

15000

多床室

0
新第2段階

個室

25000

12000

準個室

15000

多床室

10000
新第3段階

個室

50000

20000

準個室

40000

多床室

10000


() 新第2段階で多床室利用の場合
居住費
  補足的給付の基準額  10,000円(A)
 −負担上限額       10,000円(B)
  補足的給付金額         0円
食費
  補足的給付の基準額  48,000円(A)
 −負担上限額       10,000円(B)
  補足的給付金額    36,000円

その他、低所得者対策として

D 高額サービス費の月額上限額の引き下げ
E 社会福祉法人による利用者負担額減免制度の
  運用改善
F 平成17年3月末を持って廃止が予定されて
 いた
旧措置者への経過措置(減免措置)の5年間の
延長措置。

などが予定されています。しかし、一方であまり周知されておりませんが、平成17年度より、老年者控除の廃止、公的年金等控除の縮小が行なわれる結果、その影響を受ける方々が出てきます。場合によっては、これまでならば補足的給付の対象となる方が該当しなくなる事もありますのでご注意願います。

上記を踏まえ、月あたりの負担額がどの程度になるかですが、現在の見込みでは、当施設のような多床室の場合、月額8万7千円の自己負担(要介護度5、補足的給付無しの場合)、また個室施設の場合には13万4千円円もの自己負担となり、現在ご利用されているお客様、これから施設利用を考えていらっしゃる方々に対し、多大な負担増となることは明らかです。また私ども施設にとっても、2年前に4.2%の介護報酬削減が行なわれて以来の2度目の介護報酬の削減です。国の財政状況の反映とはいえ、今後の施設サービスにとって、ご利用になる皆様にも、サービスを提供する私共にも、厳しい環境となってきていることは確かなようです。

2.インフルエンザにご注意を

左のグラフは「東京都インフルエンザ情報」の3月2日現在の患者数です。今年は予想とは全く異なったB型ウィルスによる大規模な流行となってしまいました。インフルエンザは高齢者には特に危険な感染性疾患です。流行はまだまだ収束しておりません。皆様も十分にご注意を御願い致します。