■あかぼこ山 24号 ■ 2003年06月01日号
1 在宅介護教室から
4月27日(日)に在宅介護教室を行いました。今年度は「介護で気になる感染症」と題して取り組んでゆく予定ですが、一言で感染症といっても様々なものがあります。そこで感染経路別に@接触感染A血液感染B飛沫等感染に別けて、それぞれの介護の場面で多く出くわすものにスポットを当てることと致しました。
第1回「疥癬とそのケア」 ※(資料が多いので今号と次号に連載させて頂きます)
1. 疥癬(かいせん)とは
「お婆さんが病院から退院して、しばらくすると下腹部や手指の付け根などがひどく痒いと言って夜も寝られない。見てみると広範囲に湿疹が出来ており、掻き壊しもある。市販の軟膏などを塗ってみたもののいっこうに良くならない。気がつけば介護者にも同様の症状が出てきてしまった。皮膚科で診てもらったら疥癬だと言われた。」こんな話を聞いたことはあるでしょうか。時に病院や施設で集団発生したり、そこから在宅まで広がってしまう場合もある厄介なものに疥癬という感染症があります。疥癬とはヒト疥癬虫(ヒゼンダニ)というダニの一種が皮膚に寄生して発症します。
(ヒゼンダニ)
メスの体長は約0.4mm、オスが0.2mmで、円盤状で白っぽい体をしています。微小なので肉眼で虫体を見分けるのは困難です。メスは交尾後皮膚の角質にもぐりこみ、トンネルを掘り進みながら、毎日2から4個の卵を約30日間産み続けます。卵は3から5日で孵化し、幼虫となってトンネルから這い出し、脱皮を繰り返しながら若虫を経て2週間程度で成虫となります。受精したメスのヒゼンダニは5分程度で手掌の角質に潜り込んでしまいます。(トンネル内のダニにアルコールは無効)オスの成虫や幼虫、若虫は皮膚の表面をうろついたり、毛穴の中に隠れていたりします。
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ヒゼンダニは角質層よりも内側に進入することは無い。
※
発疹が出たり、かゆみが出るのは、虫体や糞に対するアレルギー反応によるものと考えられているため、7日から1ヶ月の潜伏期間を経てから症状が出てきます。
・ノルウェー疥癬の潜伏期間 7日前後 ・一般の疥癬の潜伏期間 1ヶ月程度
(ヒゼンダニの弱点)
@乾燥に弱い
皮膚を離れると長生きできず、床に落ちたヒゼンダニは通常の室温、湿度では1日が限度で、落ちてから2〜3時間で次の宿主に取り付く能力を失う。
A人肌程度の温度でないと動作が鈍くなる。
37℃ → 2.5cm/ 分 16℃ → 全く動けない。
B熱に弱い。
50℃ → 10分程度で死滅する。
2.感染経路
感染経路には@直接経路A間接経路B角化型(ノルウェー型)疥癬患者を介した経路があります。
@直接経路
疥癬は通常皮膚と皮膚が接触することにより感染しますが、雑魚寝病とも呼ばれ、畳の上での雑魚寝はヒゼンダニにとって絶好の感染の機会であり、寮などで集団発生する例もよくみられます。
A間接経路
仮眠室や当直室を利用する機会の多い職場では、まだ人肌の温度が残っている布団やシーツ、ベッドを共用することで職場内での集団発症にいたることがあります。
B角化型(ノルウェー型)疥癬患者を介した経路
角化型疥癬は通常の疥癬に比べ、ダニの数は桁違いに多いため、感染力は強力です。病院や老人ホーム内で一人でも発症すると、同室者はもとよりケアスタッフや掃除担当者など、さらにはその家族や見舞い客にまで波及することがあります。
3.症状
(1)病型
疥癬には(普通の)疥癬と角化型(ノルウェー)疥癬の二つのタイプがあります。(次ページ表参照)
項目
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疥癬
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ノルウェー疥癬
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寄生数
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1,000以下
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100万〜200万
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患者の免疫力
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正常
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低下している
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感染力
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弱い
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強い
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主症状
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丘疹・結節
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角質増殖
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部位
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頭・頸を除く全身
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全身
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かゆみ
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強い(夜間強い→不眠)
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不定
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※ノルウェー疥癬(角化型疥癬)
発疹
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好発部位
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特徴
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小さく赤い丘疹
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腹部、胸部、大腿、腋窩・前腕・上腕の屈側
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ダニの抜け殻、糞などに対するアレルギー疹。発疹部に虫体はいない。
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疥癬トンネル
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手掌(手関節部、指間)陰部、股間部、腋窩、臀部、足
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細いわずかに盛り上がった線状の発疹。メスのヒゼンダニが卵を生んでいる場所。
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小さなしこり(結節)
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外陰部、肘頭、腋窩、臀部
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赤褐色で小豆大のしこりで、治療によりヒゼンダニが死滅し、他の症状が軽快しても数ヶ月に渡りかゆみが残ることがある。
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角質増殖
(ノルウェー疥癬の場合)
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頭、頸を含めてほぼ全身。
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角化型疥癬に特徴的な皮疹。
極めて厚い灰色、黄色の角質が蛎殻状につく。
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ノルウェー疥癬は上記の通り、非常に強い症状および感染力を示します。しかし、これは普通の疥癬と異なる種類のダニによって引き起こされるのではなく、同じダニを原因とします。但し罹患した患者の状態が下記のような場合に、主に免疫力の低下によりこのような発症となります。従って仮に健常者がノルウェー疥癬患者から感染を受けた場合には、発症するのは普通の疥癬症状ということになります。
@老衰、癌の末期、重症感染症などのため、免疫不全状態にある方。
A副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤を服用している方。
B副腎皮質ステロイド外用薬を誤用し、免疫力を低下させた方。
(通常の疥癬治療に誤って外用ステロイド剤を使用すると集団感染を引き起こす恐れがある。)
4.受診
1)医療機関受診のポイント
@夜間に増強する痒み。A皮疹(表2参照)B家族、同居人などに、同じ症状を持つものがいる。
@〜Bで2つ以上該当する場合は皮膚科を受診しましょう。
2)受診に際して
医師へは次の事柄に留意して説明をします。
@いつから、どこに、どんな皮疹が出来たのか(拡がったか)。A痒みはどうか。(夜間に強くなり、不眠になったりしているのか)
B家族や身近なヒトに同じ症状の人がいるか。C診察時に「疥癬の心配は無いか?」を必ず聞く。
5.確定診断
診断は、皮疹の部位の皮膚(表面)を一部採取して、顕微鏡で虫体や卵の有無を確認することで行います。
(以下次号)
2 施設からのお知らせ
1) 在宅介護教室
(テーマ) 在宅介護で気になる感染症A「血液(体液)感染」
(日時) 7月20日(日) 午後1:30〜3:00 (場所) カントリービラ青梅
2) 夏体験ボランティアのお知らせ
今年も社会福祉協議会主催の「夏体験ボランティア」が実施されます。これは夏休みの期間を利用して学生や社会人の皆さんにボランティア活動を体験してもらおうと言う企画で、毎年この時期に実施されます。具体的には受入先の老人施設や保育園、障害者施設等で各種お手伝いなどのボランティア活動を行います。当施設も受け入の申し出をさせて頂いておりますので、よろしければご参加頂けます様お願い申し上げます。申込窓口は青梅市ボランティアセンター(рQ3−7163)です。
3) 日本財団福祉車両助成事業完了のお知らせ
日本財団の平成14年度福祉車両助成金の交付を受けまして、次の車両助成
事業が完了致しました。事業完了のご報告を申し上げますとともに、日本財団
会長様はじめ、ご協力賜りました関係各位に慎んで感謝を申し上げます。
記
1.事業名称 車椅子対応車1台
2.事業総額 171万円
3.助成額 102万円
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