■ 2011.6.15号
|
1.団塊の世代と「サービス付き高齢者向け住宅」 突然ですが問題です。次の3つの言葉の読み方と意味をお答え下さい。 ①「高円賃」 ②「高専賃」 ③「高優賃」 ヒントの一つも考える暇も無くイキナリ答です。①は「こうえんちん」と読みます。もちろん円高を背景にした外貨取引云々ではありません。②は「こうせんちん」です。これも高等専門学校の卒業生の賃金の事ではありません。③は「こうゆうちん」。やはり高齢者優遇ローン等ではありません。 1)「高齢者住まい法」の改正 今年4月に「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(2001年)の一部改正が行われ、これまで「高齢者円滑入居賃貸住宅制度」の下にあった①高齢者円滑入居賃貸住宅(略「高円賃」:高齢者の入居を拒まない賃貸住宅)②高齢者専用賃貸住宅(略「高専賃」:主に高齢者専用の賃貸住宅。)③高齢者向け優良賃貸住宅(略「高優賃」:高専賃のうちバリアフリーなど一定の条件を満たしたもの。)を一本化し、新たに「サービス付き高齢者向け住宅」という範疇が設けられました。もともと介護保険法の平成17年度改正により「適合高齢者専用賃貸住宅」(床面積や設備などにおいて厚労大臣が定める基準に適合するものとして都道府県知事に届け出ているもの)に対しては居住者が介護保険サービスを利用することが出来るよう「特定入居者生活介護」の給付対象となっていましたが、今回新設された「サービス付き高齢者向け住宅」では、さらに進んで、新たに介護保険に創設される「24時間地域巡回型随時訪問サービス」と組み合わせることで、より介護・看護サービスを必要とする重度な状態像の方でも地域で生活することが可能となるようイメージされています。これまで「住宅」は国土交通省、「介護・医療」は厚生労働省が管轄してきたため、それぞれが別々の枠組みで考えられてきましたが、今回の「サービス付き高齢者向け住宅」「24時間地域巡回型訪問サービス」では国交省と厚労省それぞれにまたがって行われるという、これまでに類の少ない取り組みになっています。 2)「団塊の世代」の高齢化 ではその背景にはどのような事象があるのでしょうか。その最も大きなものがいわゆる「団塊の世代」の高齢化です。政府の人口推計によると、75歳以上の後期高齢者の全人口にしめる割合は、2008年には10.4%、それが13.1%(2015年)→18.2%(2025)→26.5%(2055年)と増加の一途をたどります。注目すべきは、ここに挙げられている2008年とはすなわち「団塊の世代」が定年を迎えた時期(2007~9年)にあたるということです。そして団塊の世代が2025年には75歳、つまり後期高齢者となり、人口に占める後期高齢者の割合も2008年の1.75倍に増加します。この1.75倍という数値は、介護についても住宅問題についても、現在の1.75倍の費用が必要となる可能性を示しています。またこの傾向は都市部において著しく、2005年~2015年における高齢者人口の増加割合は秋田県(11%)・山形県(10%)であるのに対し、埼玉県(55%)・神奈川県(47%)となっており、これに加えて認知症高齢者の出現割合や高齢者のみの世帯の割合も増加するとの推計もあることから、これらの問題は都市部においてより深刻となるものと思われます。そのような中でこれまでの設備整備の枠を超えて、民間事業者の手による高齢者世帯に対するバリアフリー住居の安定提供と、そこに介護保険サービスを有機的に関連させて、結果として施設サービスへの依存度を下げるという方向性は、高齢化社会化に対する一つの具体的対応策として提示されたものと見ることが出来ます。 3)「サービス付き高齢者向け住宅」ってどんな住宅 では「サービス付き高齢者向け住宅」とはどんなものなのでしょうか。国交省担当者の「サービス付き高齢者向け住宅登録制度」による「創設登録基準(案)」を見ると以下の通りです。 ①入居者:60歳以上の者または要介護(要支援)認定を受けている者、および同居人。(配偶者、60歳以上の親族などの条件あり。) ②居室 :居室部分の床面積は25㎡以上(居間、食堂、台所その他の住宅の部分が高齢者が共同して利用するため十分な面積を有する場合は 18 ㎡以上) :各居住部分に、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備えたものであること。(例外あり) :バリアフリー構造であること。(段差のない床、手すりの設置、廊下の幅の確保) ③サービス:少なくとも状況把握(安否確認)サービス、生活相談サービスを提供。(社会福祉士、看護師ほか一定の資格者が、少なくとも日 中常駐し、サービスを提供する。常駐しない時間帯は、緊急通報システムにより対応。) ④契約等:a)書面による契約であること。b)居住部分が明示された契約であること。c)権利金その他の金銭を受領しない契約であること。 (敷金、家賃・サービス費および家賃・サービス費の前払金のみ徴収可。)d)入居者が入院したことまたは入居者の心身の状況が変化したことを理由として,入居者の同意を得ずに居住部分の変更や契約解除を行わないこと。e)サービス付き高齢者向け住宅の工事完了前に、敷金及び家賃等の前払金を受領しないものであること。等 ⑤その他:行政による報告聴取、事務所や登録住宅への立入検査の実施 上記の基準(案)から見る限り、あくまで「サービス付き高齢者向け住宅」は住宅であって、ここで言う「サービス」は必ずしも介護サービスではなく、介護サービスが必要な場合は別途介護保険における在宅サービスを利用するという立場です。但し事業者的には、介護サービスを併設して、その在宅サービスを利用してもらわなければ割に合わない面もあるとのことなので、そのことを前提にするならばサービスが利用できないリスクは必ずしも大きくはないものと思われます。反面一定の介護サービスの利用が入居の前提になる可能性や、「サービス付き高齢者向け住宅」の設置はあくまで登録制であり、国交省の管轄である為、現在のところ地域の介護保険事業計画により制限されるものではないため、住所地特例精度(施設に入所した方の元の住所地の介護保険が適用される制度)を利用して、他所で「簡易な老人ホーム」代わりに乱立するようになれば介護保険の支出の膨張につながり兼ねない等の懸念も残されています。また一方で、地域ケアの目玉になる介護保険の「24時間地域巡回型随時訪問サービス」はあくまで「地域密着サービス」に含まれる為、その施設自体が地元自治体の介護保険事業計画と整合性が無ければ給付の対象にならず、入居後に必要な状態になったにも拘らず、そのサービスが利用できない事態が生じる可能性も否定できません。利用に当たっては「サービス付き高齢者向け住宅」制度、必要になるであろう介護保険のサービスに関する制度など、詳細をよく確認する必要があることは確かなようです。 いずれにしても新しく地域包括ケアシステムの重要な要素の一つとして開始される「サービス付高齢者向け住宅」、今後の動向が注目されます。(※参照)①第72回社会保障審議会介護給付費分科会資料②「JS WEEKLY」289号(全国老人福祉施設協議会) 2.施設の風景 <紙すき> 今年度より、レクリエーションクラブの活動で「紙すき」にチャレンジしています。皆さんに伺うと「物を作ることが好き。」という方が多く、だったら昔を懐かしみながら楽しんでいただけたら…という思いから始めた次第です。高齢者の方の中には手や指に障害を抱えていらっしゃる方が多い反面、リハビリや関節の訓練などにゆっくりと時間を費やすことが少ないのが実際です。そういったことを少しでも「紙すき」で解消できればと、活動の目的には「リハビリも」と少し欲張っています。 「紙すき」には牛乳パックを使用しています。牛乳パックを数日水に漬けたあと、パックの両面のフィルムを剥がし、剥がしたパックを細かくちぎり、ミキサーにかけて漉く、といった簡単な工程で作業を行なっています。 活動中は皆さん、各々工夫を凝らしたり、細かい作業を苦にする様子もなく熱心に取り組んで作品作りに没頭しています。中には、施設周辺で採集した桜やお花を紙に混ぜる工夫をしながら、あの頃の懐かしい昔話を教えてくださる方もいらっしゃいます。 職員含め、まだまだ上手に作る事はできませんが、一所懸命頑張っております。今年も7月3日に「夏の交流会」という施設行事がありますが、その折に「家族に見せるんだ。」と皆さん張り切って作業に取り組んでいらっしゃいます。私共職員もその時の、完成品を指差して説明している皆さんの素敵な笑顔をお見せできればと思い、お手伝いに励んでおります。 「紙すき」に関しては、職員も初心者ですので、こうすれば上手に出来るよ、こうした方が良いんじゃない?など、経験者の方でご意見を頂けましたら、ご連絡をお待ちしております! (メールアドレス:countryvilla-ome@mth.biglobe.ne.jp 岡部、宇津木まで) 3.施設からのお知らせ 1)在宅介護教室へお越し下さい。 ベッドの上に横になっている人を少し横に動かす。簡単なようでやってみるとなかなか思うようにはならないものです。今回は「ベッド上、その周辺での移動、移乗」と題しまして、参加者の皆さんに実際に体験して頂きながら、そのポイントなどを学んでゆきたいと思っています。ぜひお越し下さい。 日時 )2011年6月25日(土) 午後1:30~3:00 場所)カントリービラ青梅2階食堂 その他)①参加費無料 ②午後1時10分に東青梅駅南口に送迎車あり。③問い合わせ:0428(23)6233(小嶋) 2)夏、体験ボランティア 毎年、青梅市社会福祉協議会で募集しています「夏、体験ボランティア」に当施設も受け入れ施設として登録しています。中学生以上で、夏休みの数日を利用してボランティア体験をしてみようという方は、ぜひ参加してみてください。 (詳細は青梅市社会福祉協議会まで。電話0428-23-7163) |